井上産業

Inouesangyo(い草縄工房 井上)

熊本県八代の特産品のい草は長い歴史がありその生産量は全国の8割から9割を占めると言われます。「い草縄工房井上」はその八代で、現在2代目の井上昭光さんと3代目の謙次郎さんが中心となり、独自に開発した「い草の細縄」を使用して個性豊かな製品を製造されています。

2代目の井上昭光さん
2代目の井上昭光さん
3代目の井上謙次郎さん
3代目の井上謙次郎さん
い草の茶室
い草の茶室
茶室内部
茶室内部は、い草の香りと隙間から差し込む光に包まれとても居心地が良いです

もともと家づくりや庭づくりで利用される稲藁を編んだ縄を製造していました。やがて時代は高度経済成長期へと入り沢山の家も建ち、畳の需要も増えましたが、畳にするには長さが足りずに廃棄されるい草も増加していきました。この捨てられていく「い草」をなんとか生かせないかと、次第に稲藁に替えて「い草」を使い縄作りをするようになっていきました。試行錯誤を繰り返して日本一細い「い草の縄作り」の開発に成功。縄が細くなったことで製作用途の幅は広がりました。が、残念なことに阪神淡路大震災を期に昔ながらの家づくりも変化、現在は縄の需要も大きく減ってしまいました。

この「い草の縄」は細くても強度があり、毛羽立ちにくく艶があるのが特徴です。この縄そのものの素材感を生かした「のれん」は九州新幹線ツバメの車内で使用されたり、美術館の大きな空間で間仕切りとして使用されています。また太めのい草縄を使用した「猫ちぐら」や、そのスケールを大きく改良した「い草の茶室」も完成。骨組みには竹を使用し、素材は全て天然のものです。この茶室は隙間から溢れてくる光も心地よく居心地抜群です。このように作品によってい草の品種を使い分けるなど工夫されており、縄をさらに編み込んだ草履や、縄を組み合わせ模様を生かした椅子、猫伏(ねこぶく)と言われる寝ゴザなど、い草縄の利用方法を考えだすアイデアは豊かです。利用者の意見や実際に自分で使用してみながら、良いものを次の世代へも繋げたいとの想いで日々製作に取り組まれています。

text 月花 kumamoto 熊本の器と暮らしの道具 田中比呂子

い草の猫ちぐら
い草の猫ちぐら 後ろはい草縄ののれんです

制作工程

い草の原草
い草の原草
原草を機械に入れ撚って縄に
原草を機械に入れ撚って縄に
7台の機械で縄を製作
7台の機械で3種の太さの縄を製作
3種の太さの縄
い草縄を編み込んで猫伏(寝ゴザ)を製作する機械
い草縄を編み込んで猫伏(寝ゴザ)を製作する機械
い草縄の椅子座面
い草縄の椅子座面