浮浪雲工房

Haguregumo Koubou(金刺潤平・金刺宏子)

浮浪雲工房は熊本県水俣の山間に位置する自然豊かなところにあります。近隣に自生する植物や育てた植物を素材とし、自然と向き合い、薬品に頼らない近代化以前の昔ながらの技法で手作業する紙漉きと染織の工房です。近代化以前の生活を学ぶ学校であった「水俣生活学校」での自給自足の生活を基礎として、1984年春三人の胎児性、幼児性水俣病患者を含む五人でスタートしました。

浮浪雲工房
手漉き和紙のランプ
手漉き和紙のランプ

ご主人の金刺潤平さんは手漉き和紙の作家。潤平さんが和紙の原料として使用されるのは、楮(こうぞ)三椏(みつまた)雁皮(がんぴ)はもちろんのこと、竹やバナナの木、玉ねぎの皮、熊本ならではの「い草」また履き古したジーンズなど様々です。

奥様の宏子さんは森羅万象、自然の中からいただくという気持ちを忘れないようにしています。製作工程も決まったことを繰り返すのではなく、大きく目を開いて毎回異なる自然環境と対話し、そして学びながら、丁寧な手仕事を壊さずに取り組まれています。生産性や効率化を追い求めるのではなく、作業自体に楽しさを見出す心からの手仕事。その手仕事で作り上げられる宏子さんの作品は、人にも環境にも優しく、目には見えない美しい力に溢れています。

水俣綿の花
水俣綿の花
傘を被るよように下向きにできる水俣綿
傘を被るように下向きにできる水俣綿 湿潤なアジアに適しています

金刺宏子さんは和綿(水俣綿=伯州綿)を栽培し、その綿から糸を紡ぎ、染色、機織りまでの一貫した工程をほぼ一人で行います。和綿の栽培時にも自家製の竹炭をつくる工程で得られる竹酢を除虫目的で散布する工夫もされ、化学的な薬品は使用していません。染色にも近隣に自生する木や草花、藍など全て天然の素材を使用。染料を繊維に移すための媒染も、明礬、鉄、石灰の自然由来の3種のみに絞って使用するなど、近代化以前は当たり前だった工程を今も大切に受け継ぎ、作品を製作されています。

text 月花 kumamoto 熊本の器と暮らしの道具 田中比呂子

制作工程

収穫された綿
収穫された綿
水俣綿の綿から糸紡ぎ
水俣綿の綿から糸紡ぎ
織りあがった伯州綿のマフラー
織りあがった伯州綿のマフラー
機織(茜とマリーゴールド染)
機織(茜とマリーゴールド染)
参考にされる古い染織の文献
参考にされる古い染織の文献
浮浪雲工房の竹炭
浮浪雲工房の竹炭 竹酢は虫除けに 竹炭はストーブの燃料に